郷土文化 通巻63号(石田元季翁 浅野醒堂翁 特集)

2019年5月21日

 

郷土文化 第63号
郷土文化 第63号

目次

石田元季翁………………………………….岡田 稔(1)
清水坂の翁余聞………………………………市橋 鐸(13)
醒堂先生の学問と詩文…………………………川島清堂(16)
浅野醒堂翁………………………………….安藤直太朗(25)
祖父醒堂を憶う……………………..渡辺淑子(49)/長岡不二子(50)
醒堂先生を偲びて…………………………….田島慈声(52)
彙報 ……………………………………………..(57)
編集後記

昭和35年発行 58ページ

内容について

明治から昭和時代前期の国文学者・俳人で愛知医大教授、八高講師をつとめた石田元季氏と、旧姫路藩士で、愛知県第一師範学校に奉職して、半生を師範教育に従事した能書家の漢学者浅野醒堂氏の特集号です。

石田元季翁」の冒頭部分は次のとおりです。

石田先生は、名を元季(もとすえ)、号を春風といい、別に次郎冠者・雲根・兀人(こつじん)・無用・或人・力太郎・あづさ・蝗麿等の別号を用いられた事もあり、明治・大正・昭和にまたがる国文学の大家であると共に、名古屋に於ける国語国文教育の重鎮であったばかりか、能楽・演劇・舞踊・箏曲・長唄などの演芸方面の顧問格であり、正に名古屋市に於ける文 化活動の源泉たるの概があった。尚その清水坂上の寓居「春風居」は、稀観の蔵書に富むことを以て海内に名高かった。われら直接間接にその指導誘掖を得た者が、当時まだ四・五十代の先生を目して、「清水坂の翁」と呼んだのは、蓋し、芭蕉が四十才にして已に翁と呼ばれたと同一轍であろう。

 

醒堂先生の学問と詩文」の冒頭部分は次のとおりです。

学者で詩文を能くし、詩家・文人で学問を深く究めた人は江戸時代三百年の間にも余り多数は無かった。初期の林道春(羅山)中期の荻生徂来(茂卿)末期の佐藤一斎(坦)ら数人に過ぎない。明治時代に入ると三島毅(中洲)竹添進一郎(井々)らがある。我が醒堂先生はその竹添井々翁の弟子であるから其の感化もあって学問・詩文ともに相並行して研鑽せられた。そして両者ともに本邦屈指の名家の域に達せられた。これは恩師であるから特に諛言を呈するわけではない。他の学者・文人と比較してかように申し上げたのである。