国際金融資本がひた隠しに隠すお金の秘密 単行本(ソフトカバー) – 2012/5/22 安西 正鷹 (著)、成甲書房

価値のないもの(安価な金属や印刷した紙)に価値を持たせ(信用創造)、(禁じられてきた)利子をとり、ハイパーインフレによって矛盾を解消する。マネー・システムが経済を巨大化し、地球を壊す。
難しい話題である上に、説明もわかりやすいとはいいがたく、消化不良ではありますが、ご紹介させていただきます。

お金は物々交換から発達したといいますが、本来価値があるものをお金として使うのか、本来ほとんど価値のないものをお金として使うのかでは、意味合いが違ってきます。

大資産家の所有する金(キン)を安全に保管することを請け負う商人が現れて、保管したキンに応じて預かり証を発行すれば、この預かり証は紙切れでありながら大きな価値を持つことになります。預かり証を第三者に渡すことで第三者への支払いに充てることができます。

本書に明確に書かれているわけではありませんが、「悪貨は良貨を駆逐する」と聞いて思い浮かべるような純度の低い通貨の流通よりも、証書のようにそのもの自体ではなく、そのものが表している資産の存在に価値があるような位置づけにあるお金のほうが、問題が大きいようです。

こうして、紙切れが価値を持つようになると、紙切れそのものが価値のあるものとして流通するようになり、キンへの交換なしに流通するようになります。キンの裏付けなしに発行された証書でも、キンと同等の価値を持つとして流通していれば何の問題もありません。証書を使って貸し付けを行い、利子をとれば、商人は手持ちの資金が少なくても高額な証書を発行して利益を得ることができるようになります。

利子については、建築家、都市計画家、エコロジストの肩書を持つドイツ人女性マルグリット・ケネディ氏が、「お金の機能に関する基本的な四つの誤解」を指摘して、有利子金融が将来、経済的・エコロジー的破滅をもたらすと警告しています。

一つ目の誤解は「成長には一種類しかない」というものです。穏やかな成長を思い浮かべますが、複利による増殖は直感的な成長曲線とは違い破壊的で死を招きます。

二つ目の誤解は「お金を借りたときだけ利子を払う」というものです。実際には、借金によって作られた施設や商品を利用することで間接的に利子を払わされています。

三つ目の誤解は「現在の通貨システムはすべての人に平等に利益をもたらしている」というものです。実際には、資産家ほど利子の恩恵をうけ、格差が拡大されます。

四つ目の誤解は「インフレはどの貨幣システムにもついて回る」というものです。実際は上記のように価値のある資産と結びついていないマネー・システムの欠陥を帳消しにするためにインフレが必要とされているのです。

金貸し商人たちは、このようなマネー・システムを作り上げ、利益を独占するために、動いてきました。そうしてできあがったのが、民間が所有する中央銀行が通貨発行権を独占し、利子が正当化され、ハイパーインフレが繰り返される、現代社会です。私たちは中央銀行の所有者たちが必ず勝利する世界で、ひたすら利子を支払うために働き、やっと蓄えた資産もインフレという見えない税金によって奪われる世界に生きているのです。

本書には、価値の低い安物の金属で作られた硬貨を通貨として受け入れさせることに、権力者が苦労した様子や、明治になって日本にもさっそく中央銀行が導入された歴史なども描かれています。また、時間の概念、中国の朝貢、和同開珎、シニョレッジなども詳しく説明されています。


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狩猟採集社会を調べてみると、物々交換は存在していても、価値の低いものを通貨として扱う習慣はありません。つまり、「お互いに交換したいものをその場に持っていないと交換できないという不都合を補うためにお金が生まれた」という通説はどうやら眉唾もののように私には思えます。

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先日読んだ『大航海時代にわが国が西洋の植民地にならなかったのはなぜか』では、鎖国が行われていたはずの江戸時代に貿易がむしろ盛んになっており、低迷し始めたのは、日本側で銅がほとんどとれなくなったためであったことが背景にあったとされていました。これは、銅の払底が、経済活動を抑制していたことを示しています。同じように、発行される通貨の裏付けとなるキンを必要とするマネー・システムにしたなら、経済活動がここまで大規模になることはありません。必要以上の物を流通させ、生活費を稼ぐために無意味に消費をあおる生活の背後には、現物と切り離されたカネを扱うマネー・システムがあるといえます。


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この本には、私が玉蔵さんのセミナーに出席して教わった古代シュメールから連綿と続く文明の支配者の物語について、金融システムに的を絞った部分が示されているとみなすこともできます。しかも、大部分は事実に基づいているため、常識的なかたにとっても抵抗感が少ない内容になっています。

高みを目指すことを要求されず、会社もなければ、学校もなく、毎日がゆっくりと過ぎていく狩猟採集社会や、ヤノマミ・ピダハンのようなわずかに農耕に頼る社会と、幕末の敗戦を機に持ち込まれたマネー社会とを比べることで、この本にかかれたお金の秘密による影響がどれほど多くの嘘を私たちに教えこんで、人生を食いつぶしているのかがわかります。

現代文明におけるお金は万人のためのものではなかった。だから人はお金に使われることになる。そして不幸になる。そういうことです。

内容の紹介

現代では、生まれて間もない時期からテレビ放送のシャヮーを浴び、直線的な時間によって時計 化された空疎な生活の洗礼を受ける。学校で義務教育を受ける幼少期から少年期にかけては、時計 的に編成され管理された生活秩序への習慣づけと強化が施され、組織に生きる「社会人のマナ1J が徹底的に叩き込まれる。就学や就労もしていない主婦や老人もテレビの網に取り込まれ、逃げ場 はない。
結局、あらゆる人々が自らの生理的.本能的な欲求に根ざす固有の時間を奪われ、画一化された 直線的な時間意識へと閉じ込められるのだ。(236ページ)