「略奪者のロジック 支配を構造化する210の言葉たち」響堂 雪乃(三五館 2013年2月)

略奪とはどういうことか

→目次など


毎日のように繰り返し報道される中国の脅威や北朝鮮の脅威。そのような情報に変えて、この本の210の言葉を日替わりで報道したならば、日本人の意識はがらりと変わることだろう。

本書では、誰かが残した、隠された真実を暴く言葉と、その言葉を裏付ける事例(この言葉と事例には直接の関係はないことが多い)を説明する、 1ページに満たない短い文章を組み合わせて、支配の構造化が7つの側面から分類されている。
どの言葉、事例も、入念に選ばれており、どれも記憶にとどめたい内容ばかりである。

本書の表紙を見れば、略奪される側は略奪者たちにとって、食肉同然の位置付けであることがよくわかる。

本書に示された世界は、真実の一面でしかないかもしれず、人は理性的で互恵的な存在なのかもしれない。 しかし、世界の歴史はむしろ、そのような理想主義的態度こそが支配者にとって好都合なのであると示しているのかもしれない。
本書に目を通すたびに、誰もが一度は読んだほうがよい本として、本書を推薦したくなるのである。

内容の紹介

 

より多くの方に本書を手にとっていただくために、第156項をまるごと引用させていただく。ほぼ無作為に選んだページであり、他の項もこの例のような威力を持つ言葉ばかりである。

 

フランクリン・ルーズベルト(米国第32代大統領)
私は決して宣戦はしない。私は戦争を創るのだ。

米軍は日本の「紫」という暗号を完全に解読し、真珠湾攻撃に関わる通信を緻密に傍受していた。 1941年12月、ホーネットやエンタープライズなど主力空母を外洋へ退避させた後、日本海軍に老朽艦を含む16隻を撃沈させ、太平洋戦争へ向けての世論合意に成功する。 それまでも米国はメキシコとの戦争により、テキサス、ニューメキシコ、カリフォルニアを手中に収め、スペインとの戦争ではフィリピン、グアム、プエルトリコ、キューバの併合を達成している。 いずれもテロリズムに対するやむを得ない反撃行為であり、相手国側の侵略行為により大規模選へ発展したというプロパガンダが実践させていた。 – 174ページ