「日本のペトログラフ――古代岩刻文字入門」吉田 信啓 (著)(ロッコウ ブックス 1991年10月)

岩に刻まれた古代文字は世界共通語?

→目次など

北米にズニ(zuni)族というネイティブアメリカンがいます。系統の不明なズニ語を話し、話者は1万人ほどですが、子どもも話せるという珍しい小数言語です。

本書で、このズニが「ズミ(zumi)」から音韻転化したものであるとすれば、古代九州の周防灘から響灘沿岸(志賀島~宗像)、さらには近畿へと展開した強力な海洋部族民・阿曇(アズミ)、安曇(アズミ)、蜑住(アマズミ)の転化である可能性が生まれてくるとされているのです。

そんなはずはないだろうと考えて動画を探してみたところ、いくつか面白い動画が見つかりました。

まず、
10までの数え方
数の数え方は日本語とはまったく関係なさそうです。

そんなもんだろうと考えながら、zuni語による詠唱(chant)でもないかと思って探した動画を何気なく聞いているうちに、尺八と似た音色であることに驚きました。
尺八に似た楽器 (1:12頃から)
篠笛に似た音がでる楽器もあります。
篠笛に似た楽器
東北に伝わる鹿踊りと同じ位置づけであると思われるDeer danceも見つかりました。
神楽鈴のような鈴と太鼓を使う鹿踊り
沖縄のパーランクーのような手で持って使う太鼓もあります。
ハンドドラム

いままで、尺八のような楽器が北米にあることを知らなかったうえに、他にも共通性を感じる楽器があることを知って興奮してしましました。

どうやら、日本の庶民が地元の神社で続けてきた神事と似たような、祭りがおこなわれており、日本人と似た感性を持つ人々がアメリカの先住民として暮らしてきたことは事実のようです。ただ、ズニでは、笛と太鼓を同時に使うことは少ないようですし、太鼓も一定のリズムで打ち続けることが多いようなので、その点はかなり異なっています。ただ、昨今の日本の祭りが、流行歌のような歌と、若者限定のような激しい踊りで構成されていることと比べると、よほど精神性を感じますし、共感を覚えます。

前置きが長くなりました。

ペトログラフ(世界的にはペトログリフ)とは、世界各地に残されている、人々が岩に刻んだ模様です。なかには、新しい時代のものもありますが、最大1万年以上前までさかのぼり、日本でも6500年前のものが確認されているそうです。日本全国で80カ所、450個を超えています。

ペトログラフを研究している方は少なく、本書の著者である吉田氏以外に熱心な研究者はいないようです。ホツマツタエの熱心な研究者が池田満氏で一人ある状況と似ています。

本書では西日本だけが対象になっていますが、同じ著者による『ペトログラフ探索調査手帳』には、北海道、東北、関東、中部、近畿にも分布しており、興味を持つ人があれば四国にも見つかりそうです。

内容的には『日本ユダヤ王朝の謎―天皇家の真相』と重なる部分も多く、フェニキア人の移動が推測されています。また、日本だけでなく、世界規模でのペトログリフ研究にも言及されています。

本文の説明にもありますが、本書のカバー裏に記載されたペトログラフには、七枝樹など日本各地で共通しているものがあります。特定の図形に特定の意味を持たせて使用していた集団がいたことを思わせます。

本書には、多くの眉つば情報が記載されています。
・オリエント文明は4000年以上前に日本にも波及していた
・山海経の古代世界地図が示すように4千年前の人々は今日とほぼ同一の正確な各大陸と島を把握していた
・古代リビヤ語と日本語には余りにも共通語彙が多い
・古代アフリカ(ヌミヂヤ人)の文化が北米にまで入っていた
・六千五百年前に人類の大移動があった
・古代世界は一つの言葉と宗教で結ばれていた

パンドラの種』によると、遺伝子を調べた結果、人類は7万年ほど前に絶滅しかけて、わずか2000人にまで減ってしまったと推測されるそうです。そのような状況があったとすれば、古代世界は一つの言葉と宗教で結ばれていたと本当に言えるのかもしれません。

この本も多くの刺激を与えてくれる本です。Youtube で「Native american flutes 」を検索すると、多くの素晴らしい演奏が見つかります。

内容の紹介

(UFOの追跡で有名な矢追純一氏の話を受けて)もし、それが事実だとすると、「宇宙から三女神が天から降りて来た宇佐島」との『日本書記』の記述のある、大分県宇佐には、『日本書記』の記述通りに宇宙人の「雲星集団」が戦士時代に移住して来ていたことになる。 – 14ページ

『日本ユダヤ王朝の謎』にも宇佐が登場しました。製鉄所があったということです。4000年くらい前にこの地に来た人々があったのかもしれません。

(角島の夢崎海岸に古代シュメール民族が交易ルートの島々に残したのと同じ様式のシェルター兼神殿がみつかり)地元の人々は昔から見慣れているため、それが何を意味するかも考えるまま経過していたのであるが、そのいわれを尋ねると、「わざわざ福岡県宗像の海女に来てもらい、海中に潜って、人の手も足も触れたことのない海底の漂石を取り上げてもらい、島中総出でそれを積み上げる風習が長年続いていた」という。 – 16ページ

角島の夢崎明神のようです。

(日本の古い神社には、奇妙な文字か記号かわからないような、不思議な呪文のような護符が伝わっていたが)実は明治政府は全国の神社を国家統一する方策で編成し変えることをもくろみ、明治二年に神祇官を置き、宣教師制度を通して日本国中に「惟神道」(かんながらの道)を布教し、次々と神社令を発して国家神道への一本化を図った。 そのため、それぞれの神社や村落に残っていた独自の祝詞や護符、文字、神印なども廃棄させ、神に奏上する祝詞も、今日すべての神社で神職が奏上する、「イザナギ、イザナミの神以下の八百万の神々」に申し上げる形に統一され、地方色あふれた神社や神様もすべて『古事記』、『日本書記』の系譜通りに編成されたのである。 – 23-24ページ

GHQを思わせます。また、ズニ族の踊りのような世界を持っていたのが従来の神道なのであるということも、思わせます。

ところで、「日本に漢字が入って来る以前の文字」とされる文字には、豊国文字、阿比留文字、阿比留草文字、出雲文字、節墨文字、恒見文字、阿波文字、秀真文字などのほか、神代文字。「記紀以前の歴史を伝える書」とされる「上ツ記」(ウエツフミ)文字、象形カタカナ)現在のカナ文字ではない)、高千穂文字(岩戸蓋文字)など多くの文字がある。 沖縄県立博物館が所蔵する「時草紙」の文字などは異色の文字である。 またサンカ文字や縄文字などの系譜もある。 こうしたさまざまな系譜と様態の文字が、確かに漢字が渡来する以前の日本各地にあったことは事実が証明する。 – 27ページ

教科書どおりであると決めつけることはできません。

私はレ・クイナー教授に、「あなたが最もモンゴロイドがベーリング地峡を越えてアメリカ大陸へ移動していた時期、 つまり今から六千五百年前という数字は、実は日本で曽畑式土器を持ったおそらくは海洋部族民が北海道から沖縄までの日本海沿岸、東シナ海を行き来していた時代に合致するもので、 その時期のものと見られるペトログラフや環状列石の分布や特色などを北米やポリネシアなどで多数検出されたペトログラフと考え合わせるとき、 環太平洋的にもモンゴロイドが移動したと見られること、 またハーバード学派の米国碑文学会が提示している『ケルト人やシュメール人が大西洋を渡り、もしくは太平洋経由で北米や南米に渡来した時期』という年代に一致することをご存じの上での発表でしたか」と尋ねてみた。 – 57ページ

曽畑式土器の分布域は、沖縄から朝鮮半島南部まで、ちょうど魏志倭人伝に記されている邪馬台国の勢力範囲と重なるようです。そして、エクアドルのバルディビアで出土した土器がこの曽畑式土器であるといいます。7300年前に鬼界カルデラの破局噴火があり、新たに本州から移住してきた縄文人と大陸方面からの人々が出会って作った社会があったのかもしれません。

また、中近東のリビヤ学の権威とされるトリポリ大学のアリ・クシャイム教授やアミン・タウイッヒ・チビ教授らは、「古代リビヤ語と日本語の余りにも多い共通語彙に椅子から転げ落ちる程驚いた。 せひともハーバード研究所で合同考察会をして欲しい」としてアメリカ側に働きかけたように、意外なところで日本語ルーツ探しが始まっている。 それは北アフリカのニミヂヤ文化が北米やロシアに入っていたことの最新の発見データと重複して、強烈な刺激をもたらしている。 – 266ページ

ハプログループには反映されない男だけによる交易の影響のようなものを考えると、夢物語ではなくなるかもしれません。