「あわいの力―「心の時代」の次を生きる」安田登(ミシマ社 2014年1月)

2019年3月9日

心は頭ではなく内臓にある

銚子の外れで育ち、夜の世界で働きながら大学を卒業、教師となり、25歳でそれまでの人生とは無縁なワキ方の能楽師に転じた安田登さんの著書。ミシマ社から「シリーズ22世紀を生きる」の第2弾として出版されている。

私はこの本で、初めて能の世界観を知り、自分が何も知らないことに改めて気付かされた。また、著者の発想の筋道が示されていたことで、独自の視点を持って思考するために必要な態度を教えられたように思う。

そのような独自の視点からさまざまな話題が繰り出されており、何度も驚嘆しながら、一気に読んでしまった。

何より大切なことは、言霊や身体感覚、神話など、人間の根源に立ち返ることによって、現代を捉えなおす視点が描かれていることである。

以下、余談。

この本を読み、ヒトにとって重要なものは合理性ではなく感情であり、感情は頭ではなく内臓(腹)にあると、自分なりに合点した。心が頭にあると言われても納得できないのは、真実ではなかったからなのであろう。この認識が生まれたところから、次の世界ができていくように思う。