レジ袋有料化に関する考察

中部大学教授武田邦彦氏のサイトにレジ袋追放の科学的意味という投稿があります。レジ袋が登場した背景(ダイエーの万引き対策、安価な原料を使った低品質な製品の製造)と、レジ袋追放の背景(技術の進歩により、元々安価だった原料の使い道が増えて値上がりしたことで、スーパーの負担が上がった)、レジ袋追放による影響(買い物用の袋に対する石油消費が2倍に増えるうえ、レジ袋の原料よりも貴重な石油成分が使われる、家計に年間5000円の負担が増える)が考察してあります。レジ袋を使わないほうがよいと考えておられる方は一読をお勧めします。

私は、別のところに着目してみたいと思います。

レジ袋追放は日本だけの動きではなく、諸外国でも行われています。そこで、レジ袋追放によってどのような影響が出ているのかを調べてみました。

環境特集:世界各国のレジ袋規制一覧という記事がありました。
 ・アフリカ─ルワンダ、エリトリア、ソマリランドが使用を全面的に禁止している。南アフリカ、ウガンダ、ケニアは袋の厚さに関する最低基準を設けており、エチオピア、ガーナ、レソト、タンザニアも同じような措置を検討している。 
 ・オーストラリア─タスマニアのコールズベイが、2003年4月にオーストラリア初の「レジ袋のない町」となった。多くの都市もそれに続き、2008年1月には環境相がスーパーに対し、年末までに国全体でレジ袋の使用をやめるよう求めた。 
 ・バングラデシュ─2002年にレジ袋を禁止した。バングラデシュは、1988年に国土の大半が水没した大洪水は、投げ捨てられた大量のビニール袋が排水管を詰まらせたことが一因になったとみている。 
 ・ブータン─2007年に「グロース・ナショナル・ハピネス(国家全体の幸福)」政策の一環として、レジ袋や街頭広告などを禁止した。
 ・中国─国務院は、6月1日から実施された厚さが非常に薄いレジ袋の使用禁止措置が、環境汚染を改善し、貴重な石油資源の節約につながると考えている。香港は2007年5月に、レジ袋に対する50セントの「汚染者費用」を課すことを提案している。 
 ・英イングランド─2007年にデボン州南部のモドベリーが、欧州で初めてレジ袋を廃止し、再利用可能で分解性のある袋を販売した。ロンドンの33地区は2009年から非常に薄いレジ袋の使用を禁止する計画。 
 ・フランス─議会は2005年に、2010年までに非分解性のレジ袋を禁止する法案を成立させた。フランス領のコルシカ島は1999年に大規模店舗でのレジ袋使用を禁止した。 
 ・インド─西部のマハラシュトラ州は、レジ袋がモンスーン期に排水溝を詰まらせているとして、2005年8月に製造、販売、使用を禁止した。他の州も、環境汚染の改善と、ヒンズー教徒にとって神聖な存在である牛がレジ袋を食べて死亡するのを防ぐため、非常に薄いレジ袋の使用を禁止した。 
 ・アイルランド─2002年にレジ袋に課税する法案が成立した。その結果、使用量が90%減少したが、その後が再び緩やかに使用量が増えている。 
 ・イタリア─2010年に全面的な使用禁止措置が導入される予定。
 ・台湾─2003年に導入された部分的な使用禁止措置により、デパートやスーパーが無料の袋を提供しなくなったほか、ファストフード店からは使い捨てのプラスチック皿、カップ、食器が姿を消した。自分でそれらを持ってこない客は、1台湾ドル(0.03米ドル)を支払う必要が生じた。 
 ・米国─サンフランシスコは全米で唯一、2008年4月にレジ袋を禁止した。禁止されたのは大型スーパーのみ。ニュージャージー州は、2010年までにそれらを禁止することを検討している。ニューヨークのブルームバーグ市長は2008年1月に、大規模小売店に対し、レジ袋のリサイクル・プログラム実施を義務付ける法案に署名した。
 

さて、レジ袋を目の敵にする一方で、ペットボトルは、その普及開始当初から反対運動がありました。また、武田教授の指摘によればペットボトルをリサイクルするほうがペットボトルを焼却処分するより資源を多く無駄にするそうです。消費する石油の量はレジ袋100枚で500mlペットボトル2.5本分らしく、環境への影響を考えるならばペットボトルを禁止するほうが先のように思えます。なぜ、ペットボトルの追放運動は、レジ袋ほど盛んに報道されないのでしょうか。しかも、レジ袋を禁止する理由を調べてみると、驚いたことに、はっきりした理由は特定できませんでした。先にレジ袋禁止があって、後で理由をつけているかのように多種多様な理由が挙げられています。

現代社会のあらゆる要素は、最終的には、現代文明の支配者である国際金融資本を中心に考えなくてはいけません。もちろん石油メジャーもその配下に抑えている国際金融資本にとって、レジ袋追放運動がマイナスの影響を持つものであればこれほど大きく報道されることも、規制が実施されていくこともないでしょう。国際金融資本に悪影響を与えないか、利益をもたらすからこそ、このように報道や規制が行われていると見なければなりません。

当初は、そろそろ石油の枯渇が見えてきて、これに変わるバイオ燃料や生分解性プラスチックの利権を国際金融資本が握ったことで、このような動きになってきているのかと推測してみました。調べてみたところ、1973年にあと30年で枯渇すると言われていた石油は、それから46年たった今年2019年でも、まだ50年は枯渇しないと言われているようです。バイオ燃料や生分解性プラスチックも、当初の目論見ほど普及は進んでいかず、産業としての将来性も不透明のようです。ただ、ロックフェラーなど米大手資本が化石燃料投資から撤退という記事がありますから、そうした方向への転換は想定されているのかもしれません。

こうして考えていくと、どうやら、武田教授が指摘している点(原油の消費が増える、供給価格は下がらない、他の製品に波及していない)が国際金融資本と利害対立していないという要素が大きいようです。ある程度の厚みを持つレジ袋は禁止対象でない国が多いことも、そのような背景を思わせます。さらに、現実から目をそらしながら善人でありたい人々のエネルギーを受け止め、真に大きな問題から目をそらす目的もあってレジ袋追放運動が利用されているのかもしれません。

この動きに関しては何かがおかしいとしか言えず、はっきりした背景は指摘できませんでした。しかし、現代社会のあらゆる出来事は、国際金融資本による経済活動という点を踏まえてみるべきだと私は思います。