「本当は怖い動物の子育て (新潮新書)」竹内久美子(新潮社 2013年3月)

動物である人間

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生物界の定めとして自分の遺伝子を残すことを前提としなければ生き残って行くことのできない動物。この動物の一員としての人間を見つめなおす上で、重要な多くの示唆を与えてくれる良書です。

パンダは2頭生まれる子のうち一頭しか育たず、一頭はスペアとして生まれてくるにすぎません。同じようなことは豚(イノシシ)にもあり、母豚の出す乳の量は乳首によって大きく違っています。豚の子はどの乳首から乳を吸うのかを授乳のたびに争うのではなく、最初に決まった乳首からしか乳を吸わないので成長に大きな差が出てきます。この結果、食糧事情が悪い年でも、全滅することを回避できます。

自分の遺伝子を残すためにはメスは複数のオスと交尾をして子孫の遺伝子を多様化する場合があります。

文明化していない社会での子育ての在り方は、こうした動物たちとの共通点が多く、文明社会での在り方について再考を促すことにつながります。

人生相談の悩み事を聞き、このような本を読むことで、人間はやはりあくまでも動物として存在しており、社会が複雑になり、この事実を歪める価値観が増えれば増えるほど、歪みも大きくなってきているように感じます。

内容の紹介

 

人間も動物の一種である以上、子どもを持ったからといって、即座に「スイッチ」が入り、「母親」や「父親」に切り換わるわけではありません。男も女も遺伝子の論理の下、手探りの苦労を重ねながら、どう振る舞うべきかと懸命になっている。それだけのことなのです。

そんな毎日の中、子につらく当たり、手をあげてしまいたくなるような状況に直面することは誰にでもありえます。

そのような場合に、まずひと呼吸おいてみましょう。それは本能の喪失などではありません。動物としてごく自然なこと、恥ずかしいことではないと確認するのです。人間は他の動物とは違う、もっと高等だ、などと思い込み、自分を追い詰めるようなことだけはしてはいけないのです。 – 207ページ