「家庭における実際的看護の秘訣」築田多吉 (著)(研数広文館 1925初版以来1600版余り)

漢方、民間療法、鍼など幅広く収録し、一家に一冊常備の健康本「赤本」

→目次など


漢方、鍼、ビワ葉温灸、青汁療法、カイロプラクティック、指圧療法、おけつ…。大正14年(1925)に上梓され千版を超えて読み継がれた健康本「赤本」。ちょっと見てみたい本です。

本書を著した築田多吉氏は、元、日本海軍の看護特務大尉でした。長年の実体験と、日本全国を訪ねて集めたさまざまな療法に関する知識を集めたのが本書であり、それだけになかなか得ることのできない内容が含まれています。

本書では、急性の病気は医者に行けばよいが、原因のわからない慢性的な疾患については原因を特定することなく病人の抵抗力を重視する漢方療法が適しているとの考えから、主に漢方を中心とする療法が紹介されています。

964ページの本文の前に「新説不老長寿法の真髄続編」が80ページ、「巻頭警告」が62ページ収録されています。その後に骨格図などがありますが、少し前のたくましい日本人を思わせる体格が描かれています。旧字体の漢字が使用されているほか、活字も使い古されているようでつぶれて読みにくい状態になっている点は、非常に残念です。

漢方のほかに、おけつ、枇杷葉、マッサージ、冷水、断食などの療法、さまざまな民間療法が収録されている点や、美容、長寿、体質改善など単に病気の治療にとどまらない内容に及んでいる点など、かつて多くの家に常備されていたことがうなずける構成になっています。

内容は古くなっている部分も多々見られますが、内容の多様性や西洋医学で対処できない疾病への対策という位置づけから、参考になる部分も多いのではないかと思われます。

たとえば、確実性の高い避妊法として梅肉エキスの利用が提示されていたりします。薬草の知恵などは、どんなに西洋医学が発展してもなくしてよいものではないと思われます。このような意味から、特に医療関係者でなくとも、機会があれば中を確認しておきたい本ではないかと思います。

目次を見ると、「在る産院の不思議な授乳栄養法」「包茎は手術するに限る」「素人でも斯様にすれば脉搏の研究が出来マサカの時や不断に便益が多い」「不思議の霊効ある ハブ草の研究」など、ちょっと気になる内容が見つかるかと思います。

内容の紹介

本書の内容
「第一 本書はその署名が「看護の秘訣」と題してあるが実は著者の 病院生活三十五年を通じて、医療奉公前後六十年その間に体得せし 漢方療法の体験記録であつて、之を各家庭で誰でも出来る様に民間 療法として掲げたのであるがこの平凡な民間療法でも古人の書き残 した漢方古方の精粋を検討し研究した千に一失無しと云う様な療法 が多く、他の本を見て書取りたり不確実な療法は一件も書てないの であります。 (綴じ込み)