「秘境パタゴニア」飯山達雄 (著), 西村豪 (著)(朝日新聞社 1970年8月)

最後の三人となった純粋なジャガネス(ヤーガン族)の姿などを収録した、写真主体のパタゴニア探検記

→目次など


ウルトラマン怪獣のような姿をした裸族の情報をネットで目にして以来、その裸族とされていたヤーガン族について知りたいと思っていました。

先日、この本の著者である飯山達雄氏がヤーガン族に会ったことがあると知り、この本を手に入れてみました。

さっそく読んでみたのですが、残念ながら、ウルトラマン怪獣のような姿は見つかりませんでした。最後の三人であるというヤーガン族を訪問し、写真も収められていましたが、裸族であったという記述はありませんでした。一方、フエゴ島に住んでいた絶滅した別の部族オーナ族について、「裸体にグァナコの皮をただ一枚、下半身にまとって暮らしていたようだ」という記述と写真が見つかりました。

これらの情報を元に、ネットを検索してみたところ、「民族学伝承ひろいあげ辞典」のセルクナム(オナ)族 日本人にDNA類似の南米最南端民族が見つかり、私の疑問が解決しました。ヤーガン族とされていたのは、セルクナム(オナ)族のことであり、ウルトラマン怪獣のような姿は日常ではなく大切な行事のときのみだったようです。

飯山氏は南米のモンゴロイドを追い続けているということでしたが、本書の写真にモンゴロイドの様子はそれほど多く登場しません。登場人物としては征服者の子孫たちの姿のほうが多くなっています。ただ、ヤーガン族の伝統的な食べ物についての記述や、ダーウィンが残したジャガネス(ヤーガン族)に関する記述などがあり、貴重な情報を得られました。

ヤーガン族、オナ族たちの住んでいた環境の厳しさ、そのような土地で営まれていた暮らしのつつましさ、このような暮らしを「理智なるものを付与されていなかった(ダーウィン)」と断じて破壊しながら個体数を増やし環境を破壊していく人々。著者の意図とは別に、私はこのような印象を受けました。

追記:ウルトラマン怪獣のような姿で行われた儀礼についてまとめた『ハイン:地の果ての祭典』が和訳出版されました。

 

内容の紹介

カラファテと呼ぶ灌木にはクロマメほどの実がつき、この実を一度食べると、またパタゴニアに帰ってくるというジンクスがある。 味は日本の浅間ブドウに似た甘ずっぱい漿果。地表を這うガンコウランも日本アルプスのと同じ真紅の実をつけ、これらの果実はジャガネスの食膳を飾る唯一の果実である。 – 20ページ

 

ジャガネスの嗜好品
ジャガネスたちの食料のほとんどは、現在チリ政府から支給されているが、彼らは島で採れる天然の食物を、より以上に好んでたべている。 最近まで採取にのみたよって生きてきた民族だけに、島のあちこちには新しい貝塚が見られる。 岩にこびりついた貝類はアワヤと呼ぶ鯨の背で作ったヘラでこそぎ落とし、カニ、エビなどは簡単な立網を引いて捕っている。 また、南極ブナの木につくキッタリアというピンポン玉くらいのキノコがあるが、これは生のままで食べている。 マッシュルームに似たほのかな香りと、かすかな甘みが彼らの嗜好にあうのだろう。 – 24ページ

 

オーナ族は寒いフエゴ島でも裸体にグァナコの皮をただ一枚、下半身にまとって暮らしていたようだ。 他のケースには服飾品が陳列されている。 – 66ページ(写真のキャプション)