「死―宮崎学写真集」 大型本 – 1994/11/1 宮崎 学 平凡社

秋の死、冬の死、春の死、動物たち。写真による現代版の「九相図」

となりのツキノワグマ』など、長年のフィールドワークを背景に優れた作品を発表されている宮崎学さんの作品です。

「死」は不吉であり、沈鬱であり、不衛生であり、不快です。しかし、他の動物たちにとって、何日間も食糧を提供してくれたり、巣材を提供してくれたりする、贈り物にもなっています。

この本では、山中で死んだシカやタヌキが長い日数をかけてさまざまな動物たちによって「利用」されていき、ほとんど跡形もない状態になるまでの様子が記録されています。毛皮に覆われたままでさまざまな動物によって少しづつ食べられていった後で、骨も持ち去られ、毛も小鳥の巣材として持ち去られていくと、後には、わずかな痕跡しか残らず、そこに死があったことはわからなくなってしまいます。

小鳥たちが腐敗臭の付いた毛を平気で巣材に利用して新しい命を育て、動物たちが腐肉を平気で消化してしまう様子を知ることで、「死」や衛生に対する感覚も、絶対的でないことが感じられてきます。


人間も大地に生かされて、やがて大地に還っていくんだという、日本人の伝統的な自然観、宗教感につながる写真集です。