「死後の世界」研究 単行本 – 1997/8/1 隈元 浩彦 (著), 堀 和世 (著) 単行本: 239ページ 毎日新聞社

生まれ変わりや、臨死体験をまじめに科学する研究者、日本の生まれ変わり事例の現地調査、死後の世界を信じる作家たち、否定的な人びとなどを通じて、死後の世界について考える

「魂」があり、死後も存在し続けて、生まれ変わったり、死者を迎えに来たり、変性意識の中で前世を思い出させたり(ホロトロピック・セラピーなど)、幽体離脱したりする。そのような立場から科学的に研究を行う人々がいる。その研究は、生命の発生(川田薫氏)の研究や、量子力学による説明にもおよび、科学がまだ説明できていない領域の多さを再確認させることにもなる。

生まれ変わりの研究では、二千六百の事例を集めた米国バージニア大学のイアン・スティーブンソン教授の名前にたびたび言及されている。ただし、詳しい内容にまでは踏み込んでない点には物足りなさを感じる。

前世療法を取り上げた部分では、施術者の言葉として「人によっては効果のある催眠療法の一つ」であるという位置づけであり、前世や生まれ変わりをそっくり信じているわけではないことも示されている。

この分野ではおなじみの『アウト・オン・ア・リム』や翻訳者の山川夫妻、キューブラー・ロス博士、浅川嘉富氏、帯津良一氏なども登場しており、出版から20年経った今ではなつかしさを感じる方もあるだろう。

最終章では、大槻義彦氏など否定派も含めて、前世や魂の存在を信じることの背景や意味が検討されている。特に、大島清氏の唯脳論の立場による、脳が酸欠になったときに、普段は思い出せない海馬に蓄積されている記憶が表面化するものが臨死体験や前世の記憶として意識されるのだという説明は、説得力を持っているように私は感じた。また、東邦大学の高橋紳吾講師による、弊害のほうが大きいという指摘や、相手が喜ぶように嘘をついてしまうパーソナリティや分裂病との関係からの説明も、死後の世界について考えるうえで大いに役立つ視点を提供してくれている。

この世が住みにくくなって、死後の世界を信じて逃避する人が増えているとすれば、それは決して良いことではないだろう。