「ヘンプ読本―麻でエコ生活のススメ」赤星 栄志(著)(築地書館 2006年7月)

日本の文化財を支え、大豆よりも優れた食品でもあり、燃料や建築材としても利用でき、ケシとはまったく違う大切な植物大麻

→目次など


大麻は危険ではないという話を聞いて、何冊か本を読んでみましたが、結局、どうやら絶対に安全とはいいきれないが酒やタバコと大差ないことや、普段の報道ではケシと区別されていない扱いになっていることがわかったくらいでした。もっと、全体像をつかめる本を探していたところ、この本がよさそうでしたので入手してみました。本書でいうヘンプとは大麻草の種子と茎からできた素材を指し、法律上大麻と分類されている花穂と葉は含まれません。

本書の目次を拾ってみましょう。
1 ヘンプの基礎知識
(縄文時代から使われてきたこと、法律上の位置づけなど)
2 ヘンプとはどんな植物か
(繊維用品種の種類、経済性など)
3 日本文化と麻
(神社、麻の文様、横綱の化粧回しなど)
4 ヘンプを着る
(高温多湿な気候に向いたヘンプの服)
5 麻の実を食べる
(栄養失調の防止に)
6 ヘンプオイルで美しくなる!
(食用にも美容にも、マッサージ、ヘアケアに)
7 ヘンプでつくる癒しの空間
(蚊帳、アロマテラピー、有機卵など)
8 ヘンプハウスに住みたい
(漆喰壁、ドイツ製断熱材、壁紙など)
9 ヘンプ紙で森を守る
(世界最古の紙、市販品など)
10 ヘンプでプラスチックをつくる試み
(植物由来プラスチック、車、楽器)
11 ヘンプエネルギーで車が走る
(バイオディーゼル燃料に)
12 ヘンプから医薬品をつくる
(脳内マリファナ、カンナビノイド)
13 ヘンプの可能性に挑戦する
(長野県美麻、北海道)
14 ヘンプ生活24の方法
(無料でできること、企業・行政・大学にできることなど)

大東亜戦争後、占領軍によって「大麻取締法」が押付けられる以前は、日本では大麻草 を栽培することが国家によって奨励され、学校の教科書でも紹介されていたそうです。本書の目次からもわかるように、大麻は日本の文化財を支える植物でもあり、大豆とは違って成長阻害物質を含まない食べ物でもあり、さまざまな利用法を持つ上に経済性にもすぐれた植物なのです。食品として、繊維として、燃料として、医薬品として、活躍する大麻草は、規制されることさえなければ、自給自足生活のための貴重な資源になることと思われます。

食品、医療、燃料のいずれも、一部のグローバル企業のみが利益を得るように仕組みのできていくいく世界で、大麻もまた収益源としてグローバル企業に独占されていくことは目に見えています。しかし、その前に日本人にとっての大麻の重要性や、大麻の持つ豊かな可能性についてこのような本で確認しておくことは意味があるのではないでしょうか。

大麻とケシを混同させるような報道が続けられている現実に気付くためにもこのような本は有意義であると思われます。ただし、大麻利用の拡大は、コーンを使ったバイオ燃料の推進が熱帯雨林の伐採や、食糧不足に結びついたように、結局は自然環境から「余白」を消していき、私たち自身も暮らしにくい世界をもたらす点も注意しながら読む必要があると強く感じました。この点を除けば、大麻の全体像をつかむために役立つ良い本であると思います。

内容の紹介

日本では、福井県にある縄文時代の鳥浜遺跡(約1万年前)から大麻草の種子と繊維が出土しており、この時期に渡来してきたものと考えられている。 – 14ページ

この遺跡は『一万年前 気候大変動による食糧革命、そして文明誕生へ』と『人類史のなかの定住革命』でも大きくとりあげられている重要な遺跡のようです。

ヘンプオイルは必須脂肪酸バランスがよい
ヘンプオイルは、麻の実からとれる種子油である。麻の実には、約3割のオイルが含まれ、体内で合成できない2つの必須脂肪酸、リノール酸とα-リノレン酸が3対1とバランスよく含まれている。 厚生労働省やWHO(世界保健機関)では4対1の割合で摂取することを推奨している。この割合にもっとも近い植物油がヘンプオイルなのである。 ヘンプオイルは、食用だけでなく化粧用にじも使える。くわしくは、第6章「ヘンプオイルで美しくなる!」で紹介する。 – 104ページ

 

ヘンプオイルは低温圧搾法でしぼる
市販の食用油は、石油溶剤であるヘキサンで抽出し、種子のもつ風味やミネラル、ビタミン類を除去している。いわば、単なるエネルギー源としてのオイルでしかない。 食用のヘンプオイルは、国内の搾油所で低温圧搾法によってしぼっている。低温圧搾法とは、搾油機で原料を55度以下に保ってしぼる製油方法である。 精製をせず、このようにしぼっただけの油には種子特有の風味や油溶性ビタミン、そのほかの抗酸化物質、微量栄養素などが残っている。 – 118ページ

家畜になった日本人』で指摘されていた、食品の微量栄養素、ミネラルの不足につながってくる内容です。

このほか、栽培に除草剤や殺虫剤を必要としないことなど、ヘンプの多くの利点や、日本文化にとっての重要性を知ることができます。