「古代ハワイの世界観 人と神々と自然の共生する世界」 マイケル・キオニ・ダドリー著 中島和子 堀口登訳(たちばな出版 2004年1月)

物体が意識を持つ世界

この本はとても読みにくく、ほとんど飛ばし読みをしてしまいました。
道教との比較など興味深い内容が含まれているものの、全体としてはやはり、内容がこなれていない感じがします。
もっとも興味深かった点は、物体が意識を持つと考えられており、人間も自然を反映した存在であると理解されている点です。ハワイの人々が守ってきた自然を誰が破壊したのか明らかになっています。

特に面白いなと思った部分

物体の中の意識(38-39ページ)
(西洋思想の本流では、霊体と物体をはっきり区別するために、もし肉体が考える力を持っていないならば、考える魂の命令を肉体は理解できないという問題が生じるという議論を受けて)

ハワイ人は、生き物が考える力や意志を持っていることを説明するのに、霊体を持ち出さないので、このような問題にぶつかることがない。彼らは、物体も考えたり、意志を持つことができるという見方をしているのである。

自然と人間(51ページ)
(物質界の進化に関する伝承から、人間を含んだ動植物王国の多くの種は、霊的意識(アクア)が内在するものとみなければならなくなるとして)

だからハワイ人は、自分たちを自然が反映したものとして見、また宇宙を含んだすべての自然も、それらを反映したものと見ていたのである。もし人間が考え、そして行動するものであるならば、物質世界もまた同じように行動すると考えるべきである。ハワイ人の世界は、彼らと相互関係にあって共同体を形成している意識あるものによって満たされていた。古代ハワイ人は周辺を囲む自然界に依存し、その世話をし、そして互いに意思を伝達していた。そして自然界もまた彼らに依存し、資源を与え保護し、そして意思を伝達しあっていたのである。

階級社会と自然(98ページ)

ハワイ人の考えでは、進化の段階の頂上に人間がいることから、普通人が首長に仕えるように、自然界全てが人間に仕えるものと思っていた。人々は過酷な王に我慢して生涯仕えることもあり得るが、そんな王を追放することもできた。人々は良い首長の下で平和に、良い生活を送る権利があった。人が首長に尽くすように、環境も人間に尽くした。そして人間社会におけるのと同じように、環境も大切にされて、気配りやねぎらいを受けるものであった。ハワイでは、理想的に宇宙社会の全てのものに権利が認められ、必要なものは与えられてもいた。ハワイ人は、感覚のある周囲の世界の感応に敏感で愛情を持って交流していたのである。

現在の私は、階級のない社会が理想的であると考えていますが、このハワイの考え方には、階級が存在しながら、温情のある政治が行われる世界観として可能性を感じます。ハワイでは自然に対する気配りも思想として組み込まれていることを初めて知りました。

首長の特別な地位(113ページ)
(概要)
・ハワイ人は、自分たちの世界を上昇発展する階級組織体とみなしており、人間は進化した自然界の頂点にいる。
・人間社会の頂点に首長(アリヌイ)がいる。
・首長はポリネシア全域で土地と特別な関係があると考えられており、農産物の生育や動物の繁殖は首長の土地と関係すると考えられている。
・首長は自然との関係において特別の座にいることを儀式で示す。

ハワイが掲げるモットーの真の意味(119ページ)
(概要)
・ハワイ州のモットーは”Ua mau Ke ea o ka ‘aina i ka pono”
・公式には「国土の生命は公正さによって不朽不滅である」と訳されている。
・実際にはこれは意味のない訳となってしまっている。
・ハワイ人であればこのモットーを次の二つの意味に理解する(すぐれたハワイの言葉使いには複数の意味、隠された意味があるという特徴がある)。
・「王のとった行動が正しかったので国土の生命は生き続ける」
・「全てが元通りに戻ったので、国民の生活はそのまま続く」など