「森の奥の巨神たち ロボットカメラがとらえたアジアゾウの生態」鈴木 直樹(著)(角川学芸出版 2011年11月)

ゾウを知ることは人間を知ること

動物たちの自然健康法―野生の知恵に学ぶ』を読んでゾウの共感能力の高さを知り、ゾウについてもっと知りたくなりました。

この写真集は、タイの野生のアジアゾウを数年かけて記録し、その結果、浮かびあがったゾウたちの暮らしを伝える作品になっています。初めて野生のゾウに会ったとき、無限の種類の緑色を持つジャングルに潜むクジラだと感じたと表現されているように、ゾウたちに対する尊重の気持ちが伝わってくる内容になっています。

メスの作る群れによる子育ての様子や、感情をあらわにするゾウたちの様子を知るにつけて、賢さと共感能力を備え、成人したオスを追い出して平和な群れを作り、長く生きて種の繁栄を図っているゾウのあり方が見えてきます。

また、未消化な部分の多いゾウの糞は、エサとする植物の種を散布するために役立っているそうです。本書でも、ゾウによる薬草の利用が言及されていました。

このようなゾウの生態を知ると、一方的に利用することだけ考えて、自分たちにとっても住みにくい環境に変えてしまう人間のあり方や、オスの破壊性によって社会を動かしているといってもよいような人間のあり方は、よほど不自然なあり方なのではないかと思えてきます。

この本もよい本でした。