「よみがえる日本語 ことばのみなもと「ヲシテ」」 池田 満 監修/青木 純雄・平岡 憲人著(明治書院 2009年5月)

日本語を見直す上で示唆に富んだ語学書

アワ歌で元気になる』を読んで「ホツマツタヱ」に興味を持ち、調べてみたところ池田満さんという方が精力的に研究されているとわかりました。
図書館で探していると、この本が置いてあったので借りてきました。

内容は、ホツマツタヱなどを記述している「ヲシテ」文字についての語学書といえるものでした。
ヲシテの基本である相(子音)と態(母音)については、「ヲシテ文献」の勉強~ホツマ編~のページに非常によくまとめられています。

江戸時代の創作である可能性がおおいにあるヲシテ文献ですが、ヲシテは、「っ」「ん」を除いて母音で終わる開音節言語の性格が強いという日本語の特徴によく即しており、また、相と態によって一つ一つの文字が意味を持つととらえることで、日本語の姿が今までとは違って見えてくるという機能を持っているようです。

たとえば、「うみ」と「ゆり」を並べてもすぐには共通性が見えてきませんが、ヲシテで記せば、いずれも母音が「うい」であることが一目瞭然になります。
また、文の韻律も、ヲシテによって視覚的になります。
さらに、本書で紹介されているように、助詞の機能に、これまでの国文法では述べられていない共通点が見つかってもいます。

ヲシテ文献が、江戸時代に創作されたかどうかを問わず、日本語について再考するためにも、本書を一読することをお勧めします。態(母音)の意味を考えながら発音してみるだけでも、少し日本語が違ってみえるような気がします。

ただ、私の場合は、ヲシテは面白いと思う一方で、ヲシテ文字で書かれた文を見てもUFOが並んでいるようでしっくり来ず、相(子音)のそれぞれの意味を読んでもピンと来ないのもまた事実です。

内容の紹介

ヲシテ文献は、高度な文学書であり、思想書でもある。たとえ、ヲシテ文献が江戸時代の作品であったと仮定しても、文学書として独創的な内容と韻律を持っていることは否定できない。なぜ文学者がこの書に注目しないのかは、我々にとって大きな謎である。 – 115ページ

本書ではヲシテ文献(ホツマツタヱ、ミカサフミ、フトマニ)の詳しい内容は記されていませんが、この記述はまったく同意できます。
枕草子、徒然草、源氏物語、東海道中膝栗毛などと並んで高い評価を受けてよい資料であると思います。

本章では、助詞とは何かについて説明する。もし、国文法の側面から言って助詞とは何か確認しておきたいという方は、国文法の入門書を御一読いただきたい。例えば、
    「国文法ちかみち」、小西甚一著、洛陽社刊
をお勧めしよう。 – 301ページ

『国文法ちかみち』は、「日本語そのものを考察する稀有な一冊」との評を受けている良書のようです。

(「くすり飲む」、「家出る」、「私机」、「君僕」、「明日雨」、「ほんとにうれしい」、「すごい」、「今こそチャンス」の黄色い背景で示した助詞について)

ところで、これらには、助詞であるという以外に何か共通点はないのだろうか。国文法ではさまざまに分類してあって、共通点は見つからない。
(中略)

しかしながら、実は、国文法では述べられていない大きな共通点があるのだ。
「母音がオ」であるという共通点である。
(中略)

これらの例文はすべてオ段の助詞でできている。そして、「オ」のイメージは「固まったもの、変化が成熟して安定に至ったもの」、もっと煎じ詰めると「固める」というイメージである。となると、ヲシテ文法で考えるなら、直前の言葉(上詞)を「固める」というイメージでとらえて見るわけだ。 – 322-323ページ

この後、「あ」段の助詞に共通する「ありのまま、心に響くまま」というイメージの説明があります。