「思考」のすごい力 単行本 – 2009/1/20 ブルース・リプトン (著), 西尾 香苗 (翻訳)、PHP研究所

細胞は独立した生き物であり、学習し、記憶する。細胞は身体がもつ器官系(神経系・消化系・筋肉系・生殖系など)と機能的に等しいものを持ち、ストレス、自己暗示、胎教などに反応する

著者は1944年生まれの世界的に有名な細胞生物学者。本書の冒頭では、顕微鏡でゾウリムシを見たときの感動が記されている。その延長線上で私たちの身体を把握することで見えてくる世界が本書によって明らかにされている。バランスの良い食事を心がけ、持続的なストレスを避け、落ち着いた生活を送ることの重要性を細胞レベルでの動きから説明している画期的な本となっている。話は、自己暗示やプラシーボにも及んでいる。

著者は、多細胞生物であっても個々の細胞は独立した生き物であり、学習し、記憶する存在であり、身体がもつ器官系(神経系・消化系・筋肉系・生殖系など)と機能的に等しいものを持っているという。

こうしたとらえかたをすると、たとえば、私たちの皮膚がカサカサになったり、腸の働きが低下したりする背景は、「「成長・増殖」と「防衛」反応は同時に働かない」に記された説明によって納得できるようになる。

成長・増殖には環境とのあいだで物質のやりとりが必要で、生体システムは環境に対して開かれた状態になる。防衛反応では逆にシステムを閉ざして、察知された脅威と生体とのあいだに防御壁を築かなくてはいけない。両者を同時に行うことはできない。このため、ストレスにさらされた状態が続くと、細胞の集まりである私たちの身体は、成長・増殖を慢性的に阻害されて、生命力が低下してしまう。

同じようなことは、胎児の発育に関しても言える。ケンカの絶えない両親の間で育つ胎児は、コルチゾルなどのストレス・ホルモンを受け取って、十分に育つことができず、知能も低下してしまう。

アドレナリンとヒストミンの優先順位についての説明も面白い。例として、銀行で働いている行員に支店長とCEOから矛盾する指令が下された場合があげられている。行員は支店長ではなくCEOの指令に従うことになる。体全体に対して効果を持つアドレナリンが分泌される状況では、局所的な炎症を抑えるヒストミンの効果はなくなってしまう。

こういった現象については、わかりやすいが、遺伝子が生物をコントロールするのではないとか、量子力学的な考えで行者の火渡りのような現象を説明してある部分になると、私には納得しにくいものがあった。ただ、生体に対する電磁エネルギーの影響や、成長に伴って基本的な脳波の波長が変化していくという指摘など、私にとっては新たに興味を持てるトピックを得ることができた。

内容の紹介

科学者の中に、ラマルクを見直す人々が出てきているのはなぜだろうか?進化論者の研究が明らかにしているのは、生物圏の中で生命が存続していくためには、協調が大事な役割を果たしているという根本的な事実である。これが理由の一つになっているのだろう。(69ページ)

進化の方向を決めるのは環境であるという文脈で語られています。

勝者と敗者の話に戻ろう。人間は周りを取り巻く環境と相補的になるように進化してきたのだから、環境をあまりに変えてしまったら、環境と相補的ではなくなってしまう・・・・・・、つまり”フィット”しなくなる。(308ページ)

本書では、人類の進化は地球規模の共同体に集結すると主張してあります。それは、NWOの悪夢でしかないように私には思えるのですが。