「本多勝一のこんなものを食べてきた! 小学生の頃 コミック」堀田 あきお (著), 堀田 佳代 (著), 本多 勝一 (著)(朝日新聞社 1999年4月)

ツツジの花も、イロハカエデの葉も生でたくさん食べ、ハチに刺されてもめげずに巣を獲る、長野の少年たち 

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私は、野山から得られる食べられる野草や虫などの知識を仕入れるために『野山の食堂 – 子どもの採集生活』、『虫はごちそう』、『食べられる野草』などの本を入手しています。しかし、読めないままでいたところ、この本を知り、一気に読んでしまいました。

この本は、昭和10年代に小学生であった本多勝一氏の経験をもとに作られた漫画です。特に野山で得られる食物に限られたものではなく、家で飼育していたウサギやヤギのこと、マグロの刺身やまんじゅうといったごちそうのことなども含まれています。各ページの下部には、短い文章で本多氏によるコメントが記されています。

野草などの食べ方は、言葉だけではわかりにくい面がありますが、漫画になっていることで、生で食べていたのか調理していたのかや、食べる量、味などがわかりやすくなっています。私は、まったく知らなかったのですが、ツツジの花やカエデの葉を生で食べていたそうで、特にカエデの葉は満腹するほど食べていたということです。他にも、黒変した麦の穂や、出穂前のチガヤの穂など、生食可能な植物が収録されており、野山から得られる食料の可能性を思わせてくれます。

今では、圃場整備や農薬散布によって、すっかりいなくなってしまった魚たちも、当時はわんさかといたようです。

この本を読むと、ほんの少し前までは、野山の食べ物を盛んに利用しながら人々の暮らしが展開されていたこともわかります。その様子を見ていると、一方的に与えられることの豊かさを感じます。収録されている食べ物の種類は図鑑や単行本と比べると少ないですが、体験談を聞いているような感覚を得られるという点で優れた本です。


追記:
私自身は、この本に収録されている野山の食べ物のうち、サワガニ、ハチノコ、スイコンボ、アケビ、ツナミ(桑の実)は子どもの頃に自分で採って食べた経験があります。この本は小学校(国民学校)時代のみが収録されていますが、2004年に出版された『本多勝一はこんなものを食べてきた』には、国民学校、旧制中学校、高等学校まで収録されているとのことです。 なお、本名はカツイチではなくショウイチだそうです。

内容の紹介

 

伊那谷ではサワガニが唯一のカニなので、「カニ」といえばこれを指す。 ふつう冬の間だけ食べる。卵や仔ガニをかかえている雌もとれる。 夏なミミズその他を食っていたりでカニのカラダが”不純”なのと、寄生虫などを警戒して食べない。 – 100-101ページ

 

山のスッパとはスノキ(酢の木)のことだ。 家の付近にあるカタバミの葉もスッパと言って食べた。
葉に酸味があり食べるとかなりうまい
スッパは大きな灌木より幼木の方が葉が小さくてやわらかく、うまかった。カエデの葉などより上等。 – 179-181ページ