【ニート】【少子化】「かくれた次元」を読む意味【ジェンダー】【無差別殺人】【ストレス社会と癌】

ずいぶん前から読みたいと思っていながら、入手してもすぐに手元を離れていっていた 『かくれた次元』を読みました。1970年発行の古い本ですが、世界中に広まって自給的な暮らしを送っていた人類が、都市生活者になり、住環境が変化する中で発生してきた現在の事態(少子化、ニート、草食系男子、同性愛、銃の乱射や繁華街での暴走運転による無差別殺人など)を予見する内容を含んでおり、今だからこそ読む価値のある本であると感じました。

そうした内容は、本書の成果というよりは、 動物学者ジョン・カルフーン(カルホーン)がネズミを使って行った実験(「Universe 25」)の成果です。

この実験では、ネズミを広いケージの中に入れ、十分な食料と巣材を与えて、時には一部の個体を人工的に取り除きながら何代にもわたって繁殖を繰り替えさせました。餌を食べるのに時間がかかるように給餌装置を工夫したり、水の供給方法を変えたりもしました。実験の内容や結果は多くのページで詳しく紹介されているので、ここでは、省略させていただきます。

私が注目したのは、こうした実験の背景と、こうした実験の成果がその後の都市化の中でどう活用されてきたのだろうかというところです。

文明社会とは、ごく一部の資産家たちによって牛耳られている社会であると見る私の視点からすると、この実験は、より多くの富を集めるためには人々を都市に集中させる必要があると判断した資産家たちの要求を背景として、都市化の影響を調査する目的で行われた実験であるように見えます。

狩猟採集者と都市生活者とを比較してみると、狩猟採集者たちが生きるには、広くて自然環境の豊な土地、いいかえれば経済効率の悪い土地が必要です。都市生活者は、あらゆる活動を貨幣経済の下で行い、都市生活者の活動すべてが資産家の懐を潤します。狩猟採集者たちから取り上げた土地やそこに眠る資源も経済活動に利用されます。このため、都市化を進めることは資産家たちにとって必然でした。

けれども、都市化が進んで過密になりすぎれば、不衛生な環境になったり、ストレスから犯罪が増加するなどの影響から、効率の向上を望めなくなることが考えられます。

空間を高層化することでより多くの個体を収容できると本書にあるように、一つの軽減策として、高層化が考えられます。また、空間を閉鎖的にすることによってもストレスを軽減できます。核家族化や、マンション暮らしは、こうした実験の成果を踏まえて推進されてきたのではないでしょうか。

引きこもりや少子化、同性愛の広がり、ストレスが招く病気の増加は、この実験の結果から予想できたことでした。けれども、ある程度統制できていれば、破滅的な状況にはつながらない現象といえるのではないでしょうか。そこで、こうした現象については、都市化と結びつけることなく、あいまいな対応を続けて事態の推移を見守っているというのが、支配者たちの態度のように私には思えます。

『かくれた次元』とカルフーンの実験は、現代社会を理解するうえで大いに役立つものと私は考えます。